オークネット 世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る -  第13回:中古スマートフォン国内流通の健全化に向けた動きと課題 - オークネット総研ニュースレター配信



オークネット総研ニュースレター配信  ~世界の中古スマートフォン流通市場の実態を探る~
第13回:中古スマートフォン国内流通の健全化に向けた動きと課題

 2017年3月31日

 オークネット総合研究所(所在地:東京都港区/理事長:鈴木 廣太郎/URL:http://www.aucnet.co.jp /aucnet-reseach/)は、BtoBネットオークションを主軸とした情報流通サービスを提供するオークネットグループが運営し、独自の調査レポートなどを発表しています。当レポートは昨今注目される中古スマートフォン市場に関し、モバイル研究家・木暮祐一氏に取材・調査を依頼し、ニュースレターとして不定期で配信しているものです。

 さる3月14日に、中古スマートフォンなどを取り扱う8社が発起人となり、中古端末流通の普及や健全化を目指した任意団体、リユースモバイル・ジャパン(RMJ)が設立されました。こうした国内における中古スマートフォン取り扱い事業者が結束を固める一方で、世界市場に足並みを揃えていくためにはまだ多くの課題が存在します。今回はそれらの課題と展望を論考します。

1. 国内中古スマートフォン取扱事業者が結束して団体を発足

 さる3月14日、中古スマートフォン(以下、スマホ)・携帯電話を取り扱う事業者8社が発起人となり、中古端末の普及と中古市場の健全化、消費者保護や認知度向上などを目指す団体「リユースモバイル・ジャパン(RMJ)」が発足した。発起人企業は携帯市場、ゲオ、TSUTAYA、ブックオフコーポレーション、エコケー、日本テレホン、ネオリア、パシフィックネットの8社。代表理事は携帯市場の代表取締役・粟津浜一氏が務める。

<写真1>RMJ発足で並んだ発起人企業各社の代表者

 RMJ発足にあたって行われた会見で粟津氏は、「2台目需要として格安SIMと中古端末をセットで利用するユーザーが増加」していること、そして「今後成長性のあるマーケットである」といった現状を説明した。RMJとして目指す事業内容は、中古端末取扱事業の認知度向上を目指す広報活動、そうした事業者の法令順守、データ管理・不正端末流通防止等に関するガイドライン策定、優良な中古端末取扱事業者の育成、さらには関連省庁やキャリア、メーカー、MVNO事業者、他の業界団体との連携も図り、業界の健全な発展に向けた政策提言も行っていくとしている。

<写真2>RMJ発足の経緯と事業内容を説明する携帯市場 粟津浜一氏

 またRMJは買取市場の公正性・透明性を伝えることを目的として、スマホの買取価格のデータを集計した「平均買取価格」を、4月から毎月開示していくとしている。

 粟津氏は会見の中で、この平均買取価格の説明に時間を割き、大手3キャリアとの買取価格のギャップについて指摘。たとえばiPhone 5sの場合、大手3キャリアの下取価格は1万5,000円~1万6,800円に対して、RMJに加盟する企業の平均下取価格が6,361円と倍以上の開きがある。iPhone 6の場合でも、大手3キャリアの下取価格は約2万1,600円~2万6,400円に対し、RMJに加盟する企業の平均下取価格は同じ機種で1万2,141円と、1万円以上も開いている。こうした不均衡の是正に向けて意見交換を順次行っていくと発言した。

 大手3キャリアで下取りされた端末は国内で再流通することなく、中古端末は海外で売却されていることが知られている。RMJはこれについて国内の中古端末市場の拡大に貢献しておらず、国内中古端末流通市場の健全な発展につながらないと考えるようだ。

<写真3>RMJが指摘する下取り価格の違い(1)

<写真4>RMJが指摘する下取り価格の違い(2)

<写真5>RMJが指摘する下取り価格の違い(3)

2. 国内市場形成の課題は中古端末流通価格の内外格差か

 RMJが指摘する大手3キャリアが中古端末を海外で売却していることの背景や、その買取価格の適正性について考えてみたい。

 過去の当レポートでも解説してきたように、国内で買取される端末の大半は香港を通じて世界各地に流通している。昨年8月2日に公正取引委員会が公表した報告書「携帯電話市場における競争政策上の課題について」の中でも、端末メーカーやMNO(大手3キャリア)による中古端末の流通を制限する行為が望ましくない可能性がある点を指摘している。しかし、大手3キャリアで下取り(買取り)された端末が国内で再流通していない理由は、世界市場における事情が優先されているためではないかと推察する。

 需要と供給の原則を考えれば、ニーズが少ないものに対しては価値が上がらない。わが国で中古端末価格が不安定で、結果としてRMJ加盟企業の買取価格が振るわないというのも現状の国内市場環境を鑑みれば致し方ないところなのであろう。一方で中古端末の流通構造が整っている世界市場に目を向ければ、中古端末はわが国で流通する以上に高価で取り扱われている。RMJは大手3キャリアの下取価格との開きを指摘するが、大手3キャリアの下取価格は世界市場における中古端末取引価格(買取価格・販売価格相場)にほぼ準じたものとなっており(オークネット総研調べ)、決して高価で下取りをしているわけではなさそうである。経済的合理性に鑑みると、それなりの価格で取引される世界市場で売却したほうが有利と考えるのは当然のことであろう。

 では、世界ではなぜ中古スマホが流通する仕組みが整っていて、一方でわが国は未成熟なのか考えてみたい。

 まず、世界の事情に目を向けてみたい。じつは世界では2G(第二世代携帯電話、GSM方式)の時代から、中古端末を売り買いする仕組みが整備されてきた。世界を旅すると、’90年代にはすでに街のあちこちで中古携帯電話を取り扱う店が見受けられた。世界はGSM方式という通信方式で足並みを揃え、そのネットワーク上で利用できる端末も世界共通のものが利用されていった。このため新品、中古品問わず国境を越えて端末の売り買いすることも容易だった。その市場が成熟し、現在では取り扱う端末がiPhoneをはじめとする中古スマホに置き換わっていった。同時に長い歳月を掛けて端末を修理・整備したり、それらをBtoBの業者間取引からBtoCの販売店への卸に至るまで、市場流通に求められる仕組みが整えられてきたのである。

<写真6>ドイツで見かけた中古端末ショップ(2017年3月撮影)

 一方で、かつてのわが国では新品の携帯電話端末を安価に購入できたため、市場から中古携帯電話端末が求められることはほぼ無かった。また3G(第三世代携帯電話)以前は世界とは異なる独自の通信方式を推進してきたため世界の端末流通の仕組みには加わることなく孤立してきた。新品端末が安価に購入できる市場環境で中古端末は売ることもできず、通信方式の違いから余剰となった端末を海外に売却することもできなかった。このためわが国の中古端末流通市場の形成が世界から出遅れ、孤立してしまった原因と考える。

 3G以降は通信方式も世界と足並みを揃えることができたために、iPhoneをはじめとする海外メーカー製のスマホも国内でラインアップされるようになった。同時にこうしたグローバル端末は、中古端末として国内はもちろん、世界市場でも売却が可能になった。

 では、日本から世界へ中古端末が流れる一方で、世界から日本へという中古端末の流れはほぼ見受けられない要因は何か。これには日本の電波法や電気通信事業法が絡んでくる。日本でスマホ等の無線端末を利用するには日本の技術基準に準拠していることを証明する必要があり(いわゆる「技適」)、海外で販売されていた端末の多くにはこれが無いため輸入した端末を日本で使用することが許されない。中古端末を販売する事業者ベースで独自にこうした端末の「技適」を取得することは不可能ではないが、その手間やコストを考えれば合わないはずだ。

 同様に「技適」取得の課題で苦戦しているのがスマホ端末の修理等の業界(第三者修理事業者)である。こちらも徐々に規制緩和は行われてきたが(当レポート第5回、6回を参照)、本格的に事業を行うにはまだまだ敷居が高い。このような事情から国内から世界へ中古端末が出ていくばかりで、世界から中古端末が流入してくることはほぼ無く、こうしたことが国内で中古端末流通市場が形成されない要因になっている。

3. 求められる中古端末はネットワーク品質に左右される

 日本は世界の中でも最も優れた通信インフラが整った国といえる一方で、世界はまだそこに追いついてきていない。4G LTEのネットワークは世界に広まりつつあるとはいえ、実際に海外に渡航してそのネットワークを自身のスマホで体感してみれば、日本における通信品質の良さが痛感できるはずである。筆者も米国や欧州などに渡航したが、大都市圏はともあれ郊外に出れば3Gになってしまったり、4G表示がされていても十分な通信速度が体感できないことはしばしばある。さらに新興国や途上国に行けばなおさらのことで、3Gはおろか、2G(GSM)にダウンしてしまうこともある。

 日本で最新の通信インフラを有効に活かして最新のサービスを活用したいとなれば、最新のスマホ端末の利用が必須となる。実際に、国内での売れ筋端末はハイエンドモデルが中心となっている。もちろん少しでも安価に利用したいというニーズがある中で、MVNOのいわゆる格安SIMとの組み合わせで中古端末にも注目は集まりつつあるが、その場合も極端に古い端末は敬遠されているはずである。

 世界に目を向けると、昨今スマホ契約率の伸びが著しいところは新興国や発展途上国である。そうした国々では4G LTEはおろか、3Gネットワークさえもないエリアさえある。そうした国々のネットワーク環境を考えれば、2~3世代前の中古端末でも十分に活用できる。そこに暮らす人たちの所得や生活水準も高いわけではないので、旧端末は日本に比べはるかにニーズが高い。RMJは旧モデルほど下取価格に大手3キャリアと乖離がみられることを指摘するが、わが国では古いモデルよりもなるべく最新のモデルが好まれ、他方で世界市場では古いモデルでも人気が衰えないので価値が下がらず売り買いされ続ける。これが大手3キャリアとRMJの価格差の要因ではないだろうか。

 日本における中古端末流通市場は世界の中でも最も後発であり、その市場におけるニーズも世界とは大きく異なっている。MVNOの躍進やSIMフリー端末の認知の高まりなどを受けて、ようやく中古端末市場の活性化につながる要素が整い始めたばかりといったところだ。RMJは、国内において中古端末流通の健全性を担保していくことも目指しており、たとえば下取り・買取りした端末のデータ消去の徹底による個人情報漏洩対策や、買取価格の安定化に向けた様々なアクションが期待されている。こうした、国内と世界の中古端末流通における事情の違いに配慮し、また必要な法規制の緩和に向けたアクションを通じ、世界市場との障壁を無くしていくための活動にも期待したいものである。

 未成熟といえるわが国の中古端末流通市場の健全な発展に向け、RMJや本レポート第6回でも紹介した携帯端末登録修理協議会等、関連する業界団体の動きに注目していきたい。

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 1967年、東京都生まれ。黎明期からの携帯電話業界動向をウォッチし、2000年に(株)アスキーにて携帯電話情報サイト『携帯24』を立ち上げ同Web編集長。コンテンツ業界を経て2004年独立。2007年、「携帯電話の遠隔医療応用に関する研究」に携わり徳島大学大学院工学研究科を修了、博士(工学)。スマートフォンの医療・ヘルスケア分野への応用をはじめ、ICTの地域社会での活用に関わる研究に従事。モバイル学会理事/副会長、ITヘルスケア学会理事。近著に『メディア技術史』(共著、北樹出版)など。1000台を超えるケータイのコレクションも保有している。

<オークネット総合研究所 概要>
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